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『舞姫(テレプシコーラ) 』山岸涼子
昨日はきれいな青空で、いい秋の一日でした。
なんとなくぜいたくがしたくなって、イチジクを買ってきてしまいました。1パック5個入りで、丸々太ったイチジクがつまっています。

女性のお肌によろしいイチジクですが、それとはまた別に好きなのです。ただ、足が速いのが難・・・。果物が腐ると悲しいので、せっせと食べる所存です。


さて、昨日立ち寄ったBookOff(気のせいか、こいつのせいで、昔ながらの古本屋が潰れている気がします。便利なんだけど、マニアックな古本屋がなくなるのは寂しい)。105円コーナーで山岸涼子の本を見かけたので思わずぱらぱらと。

この人は古代史マンガか、人間の暗部を描いたサイコホラー、でなければバレエマンガの人なのですが、今回はバレエマンガ。

『舞姫(テレプシコーラ) 』山岸涼子

「アラベスク」を皮切りに、いろんなバレエマンガを描いている人ですが、バレエに対する思い入れはひとしおのようで。

昔、青池保子が、世界史上の偉人をおちょくった「イブの息子たち」というマンガを描いていたときに「ニジンスキー出してもいい?」と山岸涼子に聞いたら「いいよ」と言われてだしたのはよかったけど、かなりおちょくりまくっていたので、あとで山岸涼子にひどく恨まれたとか(いやでもあれじゃファンの人はさすがに怒るだろうなあ)。

今回のは、町の小さなバレエスクールを経営する家に生まれた少女が主人公で、天才でもないけど優秀な姉と、歪んだ家庭で育ったので性格が少しおかしいけど、バレエは間違いなく天才という転校生の間で「バレエ止めちゃおうかなあ」といろいろ思いつつも少しずつ成長しいくというストーリー。

これだけ書くと、ふつうの少女漫画のスポコンなのですが、さすがに山岸涼子だけあって、どろどろした部分もかなり出てきます。

転校生の女の子は小さい頃からバレエの英才教育を受けているのですが、その先生の頭が少しおかしい&家庭が歪んでいる&生活保護を受けているのでお金のかかるバレエはつらいとかいろいろな理由で、幼児ポルノを強制させられたりします。

そのせいで少し挙動がおかしかったり、人とのコミュニケーションを学習していなかったり、感情の出し方がすこしおかしかったり、で、いじめのターゲットにもなってしまう。

レビューにもありますが、山岸涼子は、不幸な人はとことん不幸に(そして醜く)描くので、かなり後味が悪い。

ただ今回のは、挙動不審の理由がかなり詳細に読者にわかるような描き方になっています。「ああ、あの先生の指導に慣れていたからこんなことをしちゃうんだな」とか「あんな出来事があったからこういうことをしちゃうんだな」とか。

以前の山岸涼子のサイコホラーだと完全に「甘え」と切り捨てていたのが、少し彼ら寄りになってきていて、見ていて少しほっとしたり。

その不幸な天才は途中で消えたままエピソードが途中になっているのですが、彼女が気になる読者はたくさんいるみたいです。子供なのに、あれじゃあんまりだしねぇ。

その一方で、主人公は幸せな家庭に育って、でも、優秀な姉の下で、才能ないのにバレエしてても仕方ないかもー、とそれなりの悩みを抱えていて、でもそれを一つずつ解決していって、と、素直なエピソードが多いので、前述のえぐいエピソードとの対比で安心してみることができます。

中でも、バレエ科学というか、ダンサーが背筋を真っ直ぐ保てるのは大脳が記憶しているからだとか、足に負担をかけない姿勢のとりかただとか、180度開脚ができる二重関節だとかが主人公の体験からわかりやすく解説されていて、やったことがない人間でも、へぇー、と面白く読めます。

それなりに続きが気になるのですが、不幸な天才がまだ出てこない様子なので、どうなるのかな、と。この人のことだから、きっと最後はアンハッピーエンドなんだろうなあ、と思うと気持ちが暗くなるのですが、読まずにはいられない上手さがありますね。

また古本屋で見かけたら買うかもしれませんが・・・落ち込みそう(笑)。でもきっと買う、という、不思議な魅力を持った作家さんです。





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MEMORIZERS
今日読んだ漫画。
by summer21st | 2005-10-21 12:33
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